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佐々木千恵
『13歳からの「人を動かす」』
ドナ・デール・カーネギー著、
山岡 朋子訳(創元社)
価格:1,365円

悩み多き「ティーンエージャー」

新聞、雑誌などでよく目にする「ティーンエージャー(以下ティーン)」という言葉。日本語ではよく「10代」と言われるが、本来ならteenが付く年齢だからthirteenつまり13歳から19歳、おおざっぱに言えば中高生、日本で言えば制服を着た一団にあたる。大人はよく「今どきの中高生は」などと口にするが、以前『10代の子って、なんでこうなの!?』〈草思社刊〉を手がけたとき、ティーンは生物学的に見て脳が発達過程にあるので、適切な状況判断ができなくても、すぐにキレても仕方ないということを学んだ。

今回『13歳からの「人を動かす」』(ドナ・デール・カーネギー著、山岡朋子訳、創元社刊)を読んで、ティーン時代を無事にくぐり抜けるのは当事者たちにとっては大変なことなんだな、と経験してたことながら認識を新たにするものがあった。そんなことを言ったら、初めて集団生活に放り込まれる幼稚園児、さまざまな年齢層の中で働くようになり厳しい現実社会に目覚める新社会人、退職後地元デビューして、それまでまるで違う人生を歩んできた人たちと対峙せざるをえない老年層だって大変だと反駁されそうだ。確かにそうなのだが、親の言に従って生活していればよかった子供から、自分で人生の舵取りをしなくてはならない大人へと脱皮する時期、勉強にせよ人間関係にせよ、その後の人生へ初めて布石を打つ時期であるからこそ、ティーンは一種独特な年齢層だとして取りざたされるのだろう。

著者ドナ・カーネギーの父デール・カーネギーの手による元祖自己啓発書であり、人間関係の古典と言われる『人を動かす』を知らないと、このタイトル中の「人を動かす」という言葉を見て、「どうリーダーシップをとるか、どう仲間を仕切るか」指南してくれる本だと誤解する向きも多いかもしれない。だが著者の言う「人を動かす」とは人の「心を」動かすことである。「人から好かれる方法」、「友達を作る方法」=「人への媚び方」、という印象を受けるかもしれないが、そうではない。自分の価値観、信念を自覚してそれに忠実に生きよう、自分のいちばん良い面が輝く生き方をしようと著者は言う。幸、不幸は心の持ちようだから、服装、持ち物など外面的なものでなく内面に幸せを見つけるべきであるし、自分の心が満たされて初めて他人とも良い関係が築ける。友達に盲従しても表面的に迎合しても良好な関係は築けない。人の話によく耳を傾けて相手をきちんと理解し、いたずらに批判しないこと、そして自分の心に素直になって良いと思ったら褒め、悪かったと思ったら謝ることが大切だ、と筆者は豊富な例を挙げながら説いてゆく。

本書を読むと、「物は言いよう」という言葉が重く響いてくる。それは心に偽って調子のよい言葉をかけろということではない。衝動的に相手を傷つけるような発言をするのは避けようということだ。これはティーンに限ったことではないが、衝動性動物であるがゆえにティーンには難関となるかもしれない。だからこそ一度腰を落ち着けて本書を読んで、具体的場面を想定したチェックポイントを用いて、自分が良かれと思っている対応が実際に人間関係を築く上で適切なのかどうなのか判断してもらいたい。

親や同級生を刺すといった中高生の犯罪が頻発し、不登校生徒が増加する、といった何かしら不穏な現況からすると、ティーン時代を無難に通過するのは昔に比べて大変になったのかなという気はする。人に影響されやすい若年層は同年代の犯罪のニュースを見たらそれを真似したくなるかもしれない。昔に比べて、自己啓発に心を砕き、子育てを副業だと思う親が増えているという、子供にとっては不幸な事態も生じているかもしれない。昔は不登校なんて選択肢はなかったかもしれない。だからティーンが道を踏み外しても、彼らだけを責めるのは理不尽だ。

小学校のころは「友達を作る」なんてあまり意識もしなかっただろうが、制服を着るようになった途端、それが意識的な行動となってしまう。それは自意識が発達し、それだけ大人に近づいてきた証拠なのだが、人付き合いは高校を卒業したらハイおしまい、とはいかない。毎日が楽しいか否かも、人間関係がその半分、いやその大半を決定すると言っても過言ではないだろう。その大事な人付き合いの基礎がこのティーン時代に築かれる。例えば中学で学び始める英語で最初につまずくとのちのち苦労するように、「人付き合い」という科目の基礎もここでしっかり叩き込まないとあとが大変になる。

本書『13歳からの「人を動かす」』は具体的な場面設定がひじょうにリアルであるし、生の声も満載なので、ティーンは自分の境遇に照らし合わせることもできるし、将来同じような場面に遭遇したときに応用することもできるだろう。そう、友達への対応に迷ったときに本書を「あんちょこ」にすればよいのだ。同時にティーンを持つ親もこれを読めば、「子供たちはこんなことで悩み、迷っているのだ」と実感し、子供への理解も深まり、また我が子の言動が異常ではないことを知って安堵するだろう。