藤岡啓介の翻訳玉手箱
藤岡先生には『翻訳は文化である』『英語翻訳練習帳』(いずれも丸善ライブラリー)という名著がありますが、サン・フレアでは新たに文芸翻訳を志す翻訳者を対象とした、具体的、現場的な「翻訳の方法」をまとめていただくことになりました。
従来の翻訳入門書をみると、著者の先生方が「これは落とし穴だ」「これは品詞変換をした方がいい」「頭から訳せ」「他動詞は自動詞へ」「直訳と意訳の違い」などと項目を立て、該当する英文を例として示していますが、藤岡先生は、「一つの作品全文を読み解く中で翻訳の問題点を論じていかなければ、ほんとうの翻訳力が身につかない」と考えておられます。
一つの作品といっても長編もあれば短篇もあります。短い短篇でも文字数で2万から3万、単語数で7〜8千語になります。ここから部分的に原文を抜き取って「秘訣」を説いたとしても、実は「抜き取られなかった」部分にも、原文を読み解き訳すための問題が山ほど残っています。作品が恋愛小説なのか推理小説なのか、あるいは空想科学小説なのか、そしてその作家がだれかによって、自ずと翻訳の文体が変わってこなくてはなりません。翻訳を世に出すためにはそこまで訳文を練り上げておかなければなりません。
今回の講座「翻訳は文化である――藤岡啓介の翻訳玉手箱」はそうした藤岡先生の持論から、一つの作品を徹底的に読み解いていこう、日本語表記の端々にも気を配って、原作者の持ち味を生かした文芸翻訳として通用する翻訳を仕上げながら翻訳術を習得していこうという講座になります。
原文には翻訳者の感得すべき英文読解キーが詰まった「玉手箱」があれば、藤岡訳にも翻訳者が学ぶべき翻訳表現法のつまった「玉手箱」があります。本講座はそうした意味をこめて「玉手箱」と命名しました。
本講座の構成はつぎのようになります。
- 原書テキスト全文(第1回は英国の作家ウィルキー・コリンズの“MR. LISMORE AND THE WIDOW”です。コリンズを取り上げたことでヴィクトリア朝英文学の周辺知識も習得できます。)
- 講義:冒頭から最後の一語までをパラグラフ毎に掲げて、その詳細な「解題」と「藤岡訳」で構成されていますが、解題ではゴシック体の小見出を数多く挿入しています。これは、「見落としてはならない翻訳の要点」で、翻訳の「玉手箱」を開けるための数多くある秘訣になります。
これによって、本講座の読者は講義を読む前に原書テキスト全文を目にすることができ、その作家の文体や作品のもつ特徴を理解しながら、自分の訳文を作成しておくことができます。また、英文解釈、単語の語義・対応語などの翻訳の要点から、原文の表記(句読点、コロン、セミコロン、疑問符、感嘆符、ダッシュ)の訳出を含めた日本語の表記法も学ぶことができます。
翻訳玉手箱は2007年12月まで1年間の連載で、第1、第3月曜日に掲載されます。1月は変則で16日、22日の掲載です。





























