入門翻訳勝ち抜き道場
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12月22日号
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翻訳玉手箱

藤岡啓介の翻訳玉手箱 第3篇
公開講座 プロになるぞ!! 第5回

藤岡啓介
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この公開講座では、読者のみなさまの参加も取り入れていきます。
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さて、コリンズの小説、今回でtext:04です。いくらか読み進んできましたね。といっても、全体で70頁ある小説のわずか2頁です。この調子で最終章にたどりつくころには、翻訳もそれこそ鼻歌交じりでできるのかな? いつになるかな? 300回位先になるとすると、年間に24回の講座として、12年と6か月はかかる。せっかく仲良しになっているビュシーノさんも眠り姫さんも、いい「お歳」になるな。早いとこ卒業してもらわなければ。

卒業といえば、先日サンフレアアカデミー「藤岡ゼミ」に通ってくれていた北村京子さんが卒業しました(卒業した、というよりも、卒業してもらった、というべきか。いい翻訳をする人です)。卒業記念に、本邦初訳でジョージ・オウェールのエッセーを『WEBマガジン 出版翻訳』に掲載してもらうことにしましたが、こうして翻訳作品を発表できる「場」があるのは、推薦できたぼくにとって、すごく嬉しい話です。

新しい提案です

ところで、本誌は「翻訳者の登竜門」ですね。読者の皆さんの翻訳作品を「わたしの新訳」欄に積極的に推薦していこうと考えています。条件は「本誌の読者」であること。この「公開講座 プロになるぞ!」は当然ですが、「翻訳勝ち抜き道場」を担当されている斎藤静代さんや新しく「入門翻訳勝ち抜き道場」を担当される藤田優里子さん、「部屋」をもたれている原田勝さん、岩坂彰さんの愛読者・講座登録者が、「私の翻訳を読んでくれ」と希望されれば、藤岡啓介が原文・翻訳を読みます。よかったら(あるいは何回 か改訂をしてもらってから)本誌の編集部に推薦して、掲載を依頼します。条件は、あなたが新人で、これまで公けの媒体に翻訳を発表したことのない人(原稿料・翻訳料をもらった経験のない人)。版権がない英米作家の文芸作品で、短編小説かエッセーが対象作品。【この提案を真剣に考える】

北村さんの翻訳で唸ったのは、ちょうどモームの短篇を勉強しているときのこと。ぼくが自分の訳文をつけて「課題解題」を作成するのですが、このとき、北村訳が気になって仕方がなかったのです。たいていはゼミ参加者の訳語、語法を避けて訳すのですが、モームで、そうはいかなかったのです。「これがモームだ!」と思って訳していくと、どこかで北村訳にかぶってしまう。いい訳だからかぶってもいいのですが、それでは面白くない。新しい表現を探すのですが、北村訳を相手にずいぶんと工夫を重ねました。

こうしたとき、ぼくは単純ですから、もうぼくの元から卒業だな、と思うのです。眠り姫さん、ビュシーノさん、あなた方二人の翻訳も、こうしたところで「判断」していますよ。

さてコリンズです。まだ第一章が終わっていません。でも、だんだんと話の展開が読めてきそうですね。ロンドンの新進弁護士、過労で卒倒、健康のため休養する、新大陸にいる親戚を頼る、といったとこがこれまでの話で読めること。やっと物語の主要登場人物の一人が現われてきましたね。

いつものように、新弟子二人の訳文を読んでください。まず自分で訳しておいて、それを他人の訳と比較検討することが大切です。言葉のひとつひとつ、表記の仕方、原文の理解など、真剣に読み取っていくのが上達への道ですね。(原文は本講座の「予告編」に掲げています)。今回は、だいぶ厳しいコメントを加えました。二か月に及んだ狂暑でご機嫌が悪かったのかも。

Text 04:

眠り姫訳:

私は後の出来事の光を頼りにそれらの言葉を振りかえる。人は誰でも本質的に浅はかな人間の言葉だとすぐに断言するように、私もその言葉について意見を述べる。そして、その人間の早まった判断は驚くひと時と出来事が一緒に彼を待ち受けているかもしれないと十分にみなしていた。

メドウクロフト氏の長男のアンブローズが農場まで私をで送るために駅で待っていました。アンブローズ・メドウクロフトの出現によって、モルウィック農場に着いてから起こる運命になっている不思議な恐ろしい事件について警告されることは難しい。何千ものハンサムで健康的な若い男性達がいる中で、そのうちの一人が言いました。「はじめまして、ルフランクさん。お会いできて嬉しいです。さあ、自動車に飛び乗って。この男性がルフランクさんの旅行かばんのお世話を致しますよ」私は同様に打ち解けて礼儀正しく返事をしました。「ありがとう。家では皆さんお元気ですか?」このように、私達は農場に向かって出発しました。

ドライブ中の会話は農業と品種改良の話題で始まった。十ヤードの道のりにさしかかる前に、私は作物と牛についてまったく知らないことをはっきりさせました。アンブローズ・メドウクロフトは別の話題を急いで見つけ出そうとしましたが、見つけられなかった。これについて、私の方でも急いで探し、自分の滞在に都合の良い時を選んでいたかどうかを運任せに訊ねてみる。この若い農夫のぼんやりとした茶色の顔はすぐに明るくなりました。偶然に、私は興味を引く話題を明らかに的中させていました。

ビュシーノ訳:

その後に体験した出来事に照らし合わせてこの到着時の感想を思い返してみると、全くの早合点であったと言えるし、読者諸氏もすぐに同じ思いを抱くだろう。「人生には時として思いがけない驚きが待ちうけている」ということも忘れて軽率に物事を決め付けていたのだ。

駅にはメドウクロフト氏の長男のアンブローズが馬車で迎えに来ていた。

アンブローズ・メドウクロフトに会った印象からは、モーウィックに到着した後に起こる奇妙で恐ろしい事件を警告するようなものは何も感じられなかった。健康でハンサムな、そしてどこにでもいそうな青年、「初めまして、レフランクさん。お会いできて嬉しいです。さあ、馬車に乗ってください。旅行かばんはそこの者が面倒見ますから」と話しかけてきた。「有難う、ご家族の皆さんは変わりありませんか?」と、私も同様に型どおりの挨拶を返した。そんな風にして農場への道をたどり始めたのだった。

馬車が動き出すとまず農業と牧畜についての話を始めたのだが、十メートルも進まないうちに作物や家畜について私が何一つ知らないことが露呈していた。アンブローズ・メドウクロフトは慌てて別の話題を探そうとしたが、うまくいかなかった。そこで私の番になったわけだが、思いつきで、この時期に訪ねることに決めてそちらの都合は良かったのかどうかと聞いてみた。若い農夫の日に焼けた無表情な顔が一瞬にして輝いたことから、偶然にも関心の高い話題を言い当てたのは一目瞭然だった

やはり読書が基本かな

解題:
I look back at those words by the light of later events; and I pronounce them, as you will soon pronounce them, to be the words of an essentially rash man, whose hasty judgment never stopped to consider what surprises time and chance together might have in store for him.
I look back at those words by the light of later events; 

難しい言葉はひとつもない。でも、訳してみると面白くない。本を日本語であろうと外国語であろうと、読み慣れていないと、こうした文章は書けないし味読できない。いわんや、翻訳できないな。

逐語的に追うと、

――わたしは振り返る、こうした言葉で、光により、後の事件の(光)。

動詞lookが出たからlightがついてきたんだろうな。in the light of, in light ofで~に照らして、~を考えて、とあるな。「光」「照らして」という発想は「法に照らして処罰する」など、日本語でもありますね。「後に起こった事件を思い出して(光のもとに持ち出して)、改めて考えてみると」くらいにふくらませて読んでみます。

and I pronounce them, as you will soon pronounce them, to be the words of an essentially rash man,:そして、こうした言葉を口に出し、読者のあなたもすぐに同じ言葉を言うだろうが、(その言葉は結果として)基本的に無分別な者の言葉である――そして、こうはいったものの、わたしだけではない、だれしもこういうだろうが、それはまったく軽率な言葉だった。

抽象名詞で工夫を

whose hasty judgment never stopped to consider what surprises time and chance together might have in store for him.:難しいですね。never stopped to considerが二重否定であるので、ここは「……を考えるのを決してやめることはなかった」ななるのですが、オカシイ。アヤシイ。コリンズが書いているのは「軽率な男、その男の軽率な判断が、どのような驚きが、いつ何どき、どこで、自分を待ち受けているか考えたこともない(それほどに軽率な判断しかできない男だったが)」ということですね。内容は読めたのですが、ここは、

never stopped to consider = did not take into account(考えていなかった)

言い換えます。動詞stopを否定語とみれば二重否定ですが、stopは普通の動詞なのですね。日本語で「止める」とすると、否定の言葉なので困惑します。(3日間困惑していました。)

ここで、「軽率な判断」という抽象名詞が主語になっていますが、抽象名詞は日本語の苦手とする考え方です。平安朝以来の大和言葉をみれば歴然、花鳥風月、おかし、かなしはあっても漢語からいただいた柔軟(性)、脆弱(性)などはありません。

たまたまディケンズの文章を開いたら、抽象名詞の文章がありました。

――Some years ago, a temporary inability to sleep, referable to a distressing impression, caused me to walk about the streets all night, for a series of several nights.

a temporary inability to sleep が主語です。これを、「一時的な眠るべき無能力が、私に散歩させることになった」と訳したら笑われますね。大昔はこうした非日本語的な発想の文章が新しい西洋風な「大文章」であると歓迎されたのですが。「一時的だったが、なかなか寝付けず……」とでも訳すでしょう。今回のコリンズの文章も同じですね。

この場合、
   軽率な判断は、……
   軽率な判断が、……

とすると、もう先に進めませんね。「軽率な判断により」「(彼は)軽率に判断して」「軽率な判断のおかげで」と考えると正しい読みにつながります。頭のwhoseを「そしてその者の軽率な判断は」ではなく、関係代名詞の「非制限用法」で、前文(わたしだけではない、だれしもこういうだろうが、それはまったく軽率な言葉だった)を受けて、

――しかも、その者は軽率にも、なにか思いがけない事件が自分を待ち受けているなどと思ってもいなかったのだ。

Mr. Meadowcroft's eldest son, Ambrose, was waiting at the station to drive me to the farm.:the stationはどうしよう?「駅」「停車場」ありますね、ジョーン・ウエインの西部劇の風景まで浮かんできます。ここは「駅」でいいでしょう。

――駅では、メドウクロフト氏の長男、アンブローズが待っていて、馬車で農場にいくことになった。

There was no forewarning, in the appearance of Ambrose Meadowcroft, of the strange and terrible events that were to follow my arrival at Morwick. :

――アンブローズの様子からそうした兆しはまったくなかった、わたしがモルウィックに到着してから奇妙な、恐ろしい事件が続いた、(その兆しが)。

A healthy, handsome young fellow, one of thousands of other healthy, handsome young fellows, said, "How d'ye do, Mr. Lefrank? Glad to see you, sir. Jump into the buggy; the man will look after your portmanteau." With equally conventional politeness I answered, "Thank you. How are you all at home?" :

the buggy:駅への出迎えに使うのだから、一頭立ての四輪馬車かな。ここはカタカナ語の「バギー」でいいですね。

the manは「下男」ですが、編集者によっては差別語というかもしれないし、若い翻訳者の語彙にない死語かもしれませんね。「うちの者」としておこうかな、同じかな、と悩みますね。

So we started on the way to the farm. Our conversation on the drive began with the subjects of agriculture and breeding. I displayed my total ignorance of crops and cattle before we had traveled ten yards on our journey. :

before we had traveled ten yards on our journey.:われわれが道のりを10ヤード旅をする(移動する)前に。

ここで1マイルとあるならそう訳しておけばいいでしょうが、10ヤードとあります。メートル法で換算してもおかしいですね。英語ではこうしたときの常套語句なのでしょう。歌のタイトルでも使われているので、しっかりした典拠があれば教えてください、【この質問に答える】。デジタルの距離表記はやめて、「ほんの少しバギーが走ったところで」程度にしておきたいな。

Ambrose Meadowcroft cast about for another topic, and failed to find it. Upon this I cast about on my side, and asked, at a venture, if I had chosen a convenient time for my visit. The young farmer's stolid brown face instantly brightened. I had evidently hit, hap-hazard, on an interesting subject.:

if I had chosen a convenient time for my visit.:もし私が選んでしまったのなら、私の訪問のために都合のよいときを。英語的な発想ですね。日本語だったらこんな風には考えません。

「わたしの都合でこうしてご厄介になることにしましたが、ご迷惑ではなかったかな」

という挨拶です。でも、それでは「都合のいい時期」が生きてきません。アンブローズの表情がパット明るくならないでしょう。「思いつきで、この訪問が都合のいいときだったかどうか訊いてみると」と訳せば、「若い農夫の日焼けしてこわばった表情がぱっと明るくなった」につながります。

藤岡訳:

こういってしまったが、この後でわたしが巻き込まれた事件を思うと、そう、だれだってこの場に立てば同じことを言っただろうが、いかにも軽率な言葉だった。だれしも、いつ何どき思いがけない事態に遭遇するか知れない、軽率にもそう判断し、考えていたのだった。

駅では、メドウクロフト氏の長男、アンブローズが待っていて、馬車で農場にいくことになった。わたしがモルウィックに到着してから奇妙な、恐ろしい事件が続いたのだが、アンブローズの様子からそうした前兆などまったく感じなかった。どこででも見受けるような、健康でいい男前の若者だった。「今日は、ルフランクさん、さっ、バギーに飛び乗って。鞄は内の者にまかせておけばいいから」と挨拶があって、わたしも同じ程度に丁寧に、「ありがとう、お家では皆さんお元気ですか」と、ありきたりの返事をした。こうして農場へと出発した。

道々話をしたのだが、まずは農業や牧畜が話題になった。ところが、馬車がほんの少し走り出したところで、わたしが穫り入れや乳絞りにまったく無知であるのが知れてしまった。アンブローズが話を変えようとしたがうまくいかない。そこでわたしが切り出すことになり、思いつきで、この訪問が都合のいいときだったかどうか訊いてみると、若い農夫の日焼けしてこわばった表情がぱっと明るくなった。大当たりだった。偶然にも、彼が話すものかどうか、うずうず迷っていた話題に触れたのだった。

自 問 自 答

ビュシーノさんからもらった「自問自答」で、そうか、そんなことを考えていたのか、と「講師」であるぼくもいたく感銘をうけています。ビュシーノさんからはその後途切れることなく「自問自答」が続いていますが、有難いことに、読者の皆さんも本気で勉強していてくれるのか、いくつかの「自問自答」がたまってきました。そうそう、眠り姫の「自問自答」もあります。ところで、読者の皆さんから寄せられる質問や感想を、「自問自答」というタイトルで括るのは変ですね。普通に「質問・感想に応える」にしようと思ったのですが、でも、考えてみると「講師」であるぼく自身が「自問自答」を繰り返して翻訳しているし、二人のヒヨコさんの訳文を批評しています。思いきって(筆者・読者の)「自問自答」ということでまとめていきましょう。いろいろと質問を仕掛けますから、どうぞ遠慮なく投稿してください。「読者の声」がどれほど「著者」を喜ばせることか。出版界では、「読者カード」が1枚戻ってくると、その背後に20人の愛読者がいる、100通ハガキが帰ってくると、2000人の「熱心な読者」がいると言われていました。もう昔の話ですが、現代の、誌面がWEBで応答がこのメールの時代、著者・編集者は1通のメールをどのように理解しておけばいいのでしょうか。(これも、【この質問に答える】になりますね。自問自答を寄せてくださった素直で勉強熱心な方、書こうと思ったが藤岡を苛めるのが可哀そうと思って遠慮した方、「この問題、突っ込んでやるか!」と思ったけど、忘れてしまったお人好しの方、いろいろいそうですね。よろしくご意見を。)

「ホーム」では変ですか?

ビュシーノさん: text:02で、車両を出てモーウィック駅のホームに降り立った私は自分の周りを見回し、「体を回復させることが、私の場合、退屈するということなら、間違いなく正に目的どおりの場所を選んだわけだ」と、心の中でつぶやいた。と、訳しましたが、「ホーム」は「プラットフォーム」と表記した方がいいのですね。絶対的な理由がありますか?

藤岡: 絶対的、といわれても困るな。「ホーム」、「プラットホーム」、どちらで表記しても構わないといえばそれまで。でも、翻訳者なら言葉を選んだとき、それなりの理由をもっていなければ駄目だな。たとえば、ここまでぼくは書いてきた、90文字の文章で、いくつ漢字を使ったでしょう? 17字ですね。ぼくにとっては、この17漢字はどうしても漢字で表記したい文字です。今回はこまかな理由ははぶきますが、書き手は自分の原稿が掲げられる誌面(新聞、雑誌、WEB画面、読者対象も含めて)を考えなければなりません。

そこで、「ホーム」ですが、一応日本語の辞書を見ておきます。(自由国民社 カタカナ・外来語/略語辞典 全訂版、を使いました。この辞書はPCで使えるので便利ですが、プロの物書きの使うものではありませんね。日本語でどういう辞書がいいか、別の機会に書きますが、皆さんは今、日本語の辞書で何を使っていますか? 【この質問に答える】 。)

ホーム(home):家庭。故郷。本国。②ホームベースの略。③療養所・孤児院・母子寮・養老院などの施設。④〔スポーツ〕本拠地。

プラットホーム(platform):①歩廊。②停留所・停車場などの昇降場。〔同義語〕ホーム ③教壇・演壇。④コンピューター・システムの基盤となるハードウェアやソフトウェア。〔語源〕フランス語のplateforme(平らな壇)から。

とあります。やはり、略語扱いはしない方がいいですね。たしか昔の歌謡曲でも「プラットフォーム」と歌っていたと思うけど。

英文から離れろ、といわれても……

ビュシーノ:一回すべてを訳してから不自然に感じるところを英文から離れて自分で感じ取ったニュアンスで訳してみようとしていますが、難しいし、怖いです。

藤岡:前回でしたね、「小学校の子供たちにゆっくりと話しして聞かせるつもりで訳したらどうかな。そんなこといったら原文がどこかへ飛んで行ってしまいます、というかもしれない けど、誤訳・混沌訳よりはいい。それに、原文から離れたと思うまでうんと離れてしまうと、意外や意外、原文に忠実に翻訳することになっています。思いきっ て訳さなければ」といったことへの感想ですね。たしかに怖いかもしれないな。でも、そういう考え方も身につけていくといいな。

「始発」のこと

眠り姫さん:まだまだ叱られてばかりで気分が滅入ってしまうこともあるのですが……。

The first steamer that sailed for New Yorkで、「始発」なのか、「初めてニューヨークに向けて旅立った船と同じ船に乗ったのか」で悩みました。藤岡先生のMR. LISMORE AND THE WIDOWでのご解説によれば、コリンズは1824年に生まれて、1851年にものを書き始めてられます。私はfirst steamerについて調べてみましたところ、大西洋を横断する船が1838年に初めて運行され、大平洋を横断する船が1836年に出航しているようです。この小説で、後に農場で起こる大事件のことなどを考えると、一番初めにニューヨークに向けて航海した時の「記念すべき船」に乗って、華々しく旅立った。と考えるほうが小説らしいと思ったのでした。

藤岡:なるほど、と唸ったけど、考えすぎだな。でも、こうして調べまくり、何度も同じように藪の中に迷い込んでいくのが翻訳、いや、翻訳だけじゃない、仕事だったら楽はできない。

ビュシーノさん:ビクトリア時代の大西洋航海について調べていましたが、なかなかぴったりのサイトに行き当たりません。なぜ調べようかと思ったかと言うと、2つ理由があります。まず一つは、the first steamer that sailed for New York の部分を読んだとき「始発」と言う言葉がまったく思い浮かばなかったからです。当時大西洋を渡る船が1日に飛行機のように何本もあるなんて想像できず、せいぜい1週間に2本程度かなと思いました。そんなわけで当時の船の時刻表はないかしらと思ったのですが見つかりませんでした。 ただ、当時はアメリカに移住する人の数が多かった為、船会社が競って船を出していたという記述があったのでもしかしたら1日に何本もあったのでしょうか?

次の理由はText 03 の最初の行、
I had chosen the voyage to America in perference to any other trip by sea, with a special object in view.

ここの a special object in view を「ある意図があったからだ」と訳した理由なのですが、私はここを単に「アメリカにおじさんがいて遊びに来いと言ってくれてるし、退屈な時間を少しでも有意義に過ごす為に前から興味のあったアメリカを見てみようか」こんな意図があったので、他の船旅より優先してアメリカ行きを選んだ。

こんな風に考えました。voyage とtripの違いは気づきませんでした。

私が調べたサイトでは10~15%の人が航海中に亡くなっていたという情報があったので確かにかなりの決心と期待を持って航海に出かけたのでしょうね。

氏名不詳さん:

今回の講座(第3回)の冒頭で気になる箇所があります。

I had chosen the voyage to America in preference to any other trip by sea, with a special object in view. : ここで、「わたしはアメリカ航路を選んだのだが、あちこちと船旅を重ねるよりも、アメ リカ行きの大航海に期するものがあった。」

と訳されていますが、アメリカ行きの大航海に力点が入りすぎています。「他のどんな船の旅よりもアメリカへの航海を選んだのには特別な目的があった」 が正しいと思います。よろしくお願いいたします。

Hannahさん:大西洋航海を調べたわけではないのですが、the first (available) steamer that sailed for New Yorkと考えていました。だから、始発ではなくて次に出るニューヨーク行きだと。

Madorenaさん:『翻訳玉手箱』折々楽しく拝見させていただいております。疑問を持たれていらした「19世紀の大西洋航路」についてですが、LiverpoolのMaritime Museumに何か資料があるのではないかとウェブサイトを当たってみました。探し方があれなのか、時刻表そのものは探し当てられなかったのですが、ここにお問い合わせをされれば、船出の頻度などは教えてくれるかと存じます。

http://www.liverpoolmuseums.org.uk/maritime/

また、ここのUseful Linksでイギリスの海洋関係資料のリソースリンクが沢山出ているので、ご参照ください。

Masayonさん:ビュシーノさんが前回の自問自答でa special object in view で悩んでいましたが、私も、まったく同様に考えていました。 

リーダーズ英和辞典での「with...in view:...を目的として、...を心がけて」という意味と取り、a special objectを、(これから説明するけど、ある)特別な目的、としたのです。つまり、次に続く文章をa special objectの説明と取りました。voyage とtripの違いは私も気づきませんでした。それを生かして、「あちこちへと船旅を重ねるよりも」としても、やっぱり、in viewが「実現しそうな、希望して、心に期して」と解釈されるところが気にかかります。次回のご説明の時に、その部分にも触れていただけると幸いです。

藤岡:皆さん、有り難うございます。今回は時間切れ、ごめんなさい、次回改めてぼくの考えを述べます。

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