入門翻訳勝ち抜き道場

わたしの新訳

 

「わたしの新訳」では、翻訳を文庫本のスタイルでお読みいただくため、縦書きのPDFを掲載しています。お読みいただくためには無料でダウンロードできるAcrobat Readerが必要です。

ダウンロードは、http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/readstep2.html

 
let's challenge classics
桜井則子
桜井則子
桜井則子
[ profile ]

「本を書くのは靴職人が靴を作るのと同じ――トロロープと自伝――」

アンソニー・トロロープは今でもイギリスでは人気のあるヴィクトリア時代の作家だが、日本ではほとんどその名が知られてない。だがその生き方や、執筆に対する姿勢を知れば、きっと多くの人が驚き、トロロープに興味を持つのではないかと思う。…

[記事全文]

アンソニー・トロロープ

自伝New!

第一章 教育(一八一五年〜一八三四年)(その二)

この頃、ひと夏の休暇をずっとリンカンズ・インの父の弁護士事務所で過ごしたことがあった。休みの間、寮から家に戻ってくる私をどこでどう過ごさせるかは、頭痛の種になっていたようだ。この時は、古びて見捨てられたままの建物のまわりをぶらつくか、 縦二段組みのシェークスピアを読む事だけが気晴らしだった。…

伊豆野良江
伊豆野良江
伊豆野良江
[ profile ]
アーサー・コナン・ドイル

クルンバー館の怪異

訳了にあたって
 長い時間かかったが、ようやく今回で物語の終わりを迎えることができた。今は心から安堵するとともに、達成感に満たされている。手頃な長さと、大好きな怪奇物ということでこの物語を選び、意気込んでスタートしたはいいが、すぐに、果たして完走できるのだろうかという、大きな不安に襲われた。
 一ページに優に二十個はある馴染みのない単語。そして、スコットランド語、ドイツ語、ラテン語、さまざまな書物からの引用や史実。おかげで、調べ物にかなりの時間を費やさなければならなかった。加えて、長ったらしくて、まわりくどい表現には苦しめられた。最低でも一日一ページは進むことを自分に課したが、何時間もかかって数行しか進まないときもあった。でも、そんなとき、「次はまだ?」とか「読んだよ」と知人から言葉をかけてもらったことで、どれだけ力づけられたことだろう。それでも、半ばを過ぎたあたりから、それぞれの登場人物への思い入れが強くなり、最後まで彼らの運命に寄り添いたいという心持で、翻訳に取り組めるようになった。ドイルを訳すのは、やはり一筋縄ではいかず苦しかったが、この経験が自分を鍛え、自信をつけることにもつながったと思う。
 長期間にわたってこの物語を読んでくださった方々にお礼を述べるとともに、この難物の訳を掲載する機会を与えられたことに感謝したい。そして、さらに読者をわくわくさせる物語を伝えられる訳者になりたいと願っている。

第十六章 底なし沼

出発したときはあたりがまだ真っ暗で、荒野を進むのは容易ではなかったが、徐々に夜が明け、フラートンの小屋に着いた頃にはかなり明るくなっていた。

フラートンはもう起きて働いていた。ここら辺の農民は朝が早い。手短に用件を話すと、さすがは現実的なスコットランド人で、フラートンはすぐさま礼金の交渉に取り掛かり、犬を貸すだけでなく自分も同行しようと申し出た。

モーダントは事を内密に運びたいらしく、それに同意しようとしなかった。しかし、この先どんなことが待ち受けているかわからないのだから、屈強な男がいたほうが心強いはずだと、

たかおまゆみ
たかおまゆみ
たかおまゆみ
[ profile ]
ヨハンナ・シュピリ

ヤギ飼い少年 モニ (後半)

心の苦しみ

翌朝、きのうの夕方と同じように、モニは暗い気持ちでヤギたちを引き取りました。ヨーデルもせず、喜びもせず、ただ下を向いて、だれかに声をかけられやしないか、時折あたりを見回したりしました。

どうしてこんなに喜べなくなってしまったのか、モニにも…

シュピリと物語の舞台フィデリス村について

佐藤志敦
佐藤志敦
佐藤志敦
[ profile ]
フランシス・イライザ・ホジソン・バーネット

わたしのロビン(後半)

わたしはテーブルに向かってお話を書きながら、ロビン君がやってきて、おなじみのち いちいという声を聞かせてくれるのを待っていました。ふと目をあげると、近くのリンゴ の木にとまって小首をかしげていたので、口笛とさえずりで挨拶し、もちろんいつもどお り楽しくおしゃべりしようとロビン君が降りてくるものと思いました。…

<特別寄稿> わたしのロビン、読みましたよ  奥津絵葉
バーネット夫人と『わたしのロビン』

桃山まや
桃山まや
桃山まや
[ profile ]
キャサリン・マンスフィールド

ドイツの保養所で

訳了にあたって
小説によっては、読んでいる時に、その作者とおしゃべりをしているような錯覚にとらわれることがある。この短編集もそういう作品の一つだった。喫茶店かどこかで、向かいの席に腰をおろしたマンスフィールドが、うっ憤晴らしをするように、わたしにドイツ人たちの悪口を言っている。ときには切なく、ときには滑稽に、彼女は人間たちがかかえる矛盾をあげつらう。ドキッとするほどその言葉は辛辣で容赦ない。やがて話は恋愛問題へと発展してゆく。彼女は男女の愛には懐疑的だ。永遠の愛などという幻はとっくの昔に切り捨てて、奔放に恋を求めているように見える。けれど、我を忘れて恋にのめりこんでいけるかといえばそうでもなさそうだ。わたしは一人の女として、彼女の抱える矛盾やいら立ちに共感しながらも、あまりに研ぎ澄まされた感性を持つゆえの苦しみに、同情を覚えずにはいられなかった。ともあれ、ひとくさり男たちの悪口を言ってしまうと、彼女はすっきりしたように、笑顔で喫茶店から出て行った。わたしはかけがえのない友達の後ろ姿に向かってつぶやいた。
「また会いましょう、キャサリン」

第十三章 炎
「マックス、どうかしてるぞ。この斜面をそんな勢いでくだって首の骨でも折ったらどうするんだ。もうやめにして、クラブハウスでコーヒーでも飲もう」
「今日はこれくらいにしておくよ。身体が湿っぽくなってきた。ヴィクター、タバコを一本くれないか。おまえはいつまでいるつもりなんだ?」
「あと一時間くらいかな。天気はいいし、だんだん調子も上がってきたんでね。ほら、そこをどけよ。ウィンクル嬢が滑ってくるぞ。実に優雅に橇を乗りこなすもんだなあ!」

最所篤子
最所篤子
[ profile ]
最所さんのブログはこちら
島田圭子
イラスト:
島田圭子
[ profile ]
最所篤子
[ profile ]
ウィニフレッド・ワトソン

ミス・ペティグルーの素敵な一日

映画 "Miss Pettigrew Lives For A Day" の予告編はこちら

場所はロンドン、時は20世紀初頭。元祖・ハケンのミス・ペティグルー(貧乏+40才+キャリアなし+家族なし)が、ある日、職業斡旋所の手違いで売れっ子美人歌手の家に派遣されていきます。ところが面接もはじまらないうちから、美人歌手やその3人の恋人たちや女友達をめぐるトラブルにまきこまれ、なぜかなりゆきで解決。すっかり気に入られたミス・ペティグルーは、美人歌手の助けで見違えるように美しく変身し、生まれてはじめてパーティーに行ったり、男性との駆け引きを楽しんだり、これまで知らなかった世界をのぞきます。そしてついには素敵な恋まで見つけるという大人のためのシンデレラ・ストーリー。2008年米公開の映画原作。アカデミー賞女優フランシス・マクドーマント演じるミス・ペティグルーの変身ぶり、歌手役エイミー・アダムズの美女っぷりをぜひ劇場で観てみたいものですが、日本公開は今のところ未定の模様です。

負け犬訳者が贈る、大人の女性のための夢物語。負け犬さんも、そうでない人も、これを読んでハッピーをつかみましょう!

北村京子
北村京子
北村京子
[ profile ]
ジョージ・オーウェル

【藤岡ゼミ卒業作品】『本とタバコ』

八月はサンフレア・アカデミーの、今年の三月に始まった「藤岡ゼミ」の最終月。モームの“Louise”や“Summing Up”を読んできたのだが、参加者の北村京子さんのモーム訳に驚いた。「オーウェルがあるよ、卒業記念にオーウェルを訳しておこう」と呼び掛けた。幸い版権がない。翻訳が出来上がった。北村さんにはすでに八年の翻訳歴があるが、文学ものは初めて。それがジョージ・オーウェルだから、ちょうといい、少しオーウェルにのめりこんで、いやサマーセット・モームでもいいのだけど、新鮮な文体を生み出してほしいな。オーウェルやモームを料理できれば、もう怖ものはない。