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![]() 志村未帆 聖人とゴブリンNew!古い大聖堂の一角にひっそりとうがたれた窪みに、小さな石の聖人が立っていた。聖人がどんな人物だったか覚えている人はほとんどいなかったが、だからこそ尊敬を集めているともいえた。少なくとも、子鬼のゴブリンはそう言った。ゴブリンは趣あるみごとな石の彫刻で、聖人が納まっている窪みを見おろすように、向かいの壁に張りだしたコーベルに彫られていた。ゴブリンは大聖堂の住人のなかでも指折りの面々とつながりがあった。たとえば聖歌隊席や内陣仕切りに施された風変わりな彫刻。。はるか高く、屋根の上に据えられたガーゴイルだってお仲間だ。… |
![]() 佐藤志敦 船長とニンフⅠ |
![]() 桜井則子 「本を書くのは靴職人が靴を作るのと同じ――トロロープと自伝――」 アンソニー・トロロープは今でもイギリスでは人気のあるヴィクトリア時代の作家だが、日本ではほとんどその名が知られてない。だがその生き方や、執筆に対する姿勢を知れば、きっと多くの人が驚き、トロロープに興味を持つのではないかと思う。… 自伝第二章 母 トロロープ家全員の生い立ちにページを費やすつもりはないが、母については少し話させてもらいたい。一つには当時の文学界でかなりの名を成した母親のことを、その子供として語らないわけにはいかないからだ。また一つには、母の人生にはじゅうぶん注 目に値するものがあるためだ。母の父親、ウイリアム・ミルトン牧師は、へックフィー ルドの教区牧師だった。… |
![]() 伊豆野良江 クルンバー館の怪異訳了にあたって 長い時間かかったが、ようやく今回で物語の終わりを迎えることができた。今は心から安堵するとともに、達成感に満たされている。手頃な長さと、大好きな怪奇物ということでこの物語を選び、意気込んでスタートしたはいいが、すぐに、果たして完走できるのだろうかという、大きな不安に襲われた。
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![]() たかおまゆみ ヤギ飼い少年 モニ (後半)心の苦しみ 翌朝、きのうの夕方と同じように、モニは暗い気持ちでヤギたちを引き取りました。ヨーデルもせず、喜びもせず、ただ下を向いて、だれかに声をかけられやしないか、時折あたりを見回したりしました。 どうしてこんなに喜べなくなってしまったのか、モニにも… |
![]() 桃山まや ドイツの保養所で訳了にあたって小説によっては、読んでいる時に、その作者とおしゃべりをしているような錯覚にとらわれることがある。この短編集もそういう作品の一つだった。喫茶店かどこかで、向かいの席に腰をおろしたマンスフィールドが、うっ憤晴らしをするように、わたしにドイツ人たちの悪口を言っている。ときには切なく、ときには滑稽に、彼女は人間たちがかかえる矛盾をあげつらう。ドキッとするほどその言葉は辛辣で容赦ない。やがて話は恋愛問題へと発展してゆく。彼女は男女の愛には懐疑的だ。永遠の愛などという幻はとっくの昔に切り捨てて、奔放に恋を求めているように見える。けれど、我を忘れて恋にのめりこんでいけるかといえばそうでもなさそうだ。わたしは一人の女として、彼女の抱える矛盾やいら立ちに共感しながらも、あまりに研ぎ澄まされた感性を持つゆえの苦しみに、同情を覚えずにはいられなかった。ともあれ、ひとくさり男たちの悪口を言ってしまうと、彼女はすっきりしたように、笑顔で喫茶店から出て行った。わたしはかけがえのない友達の後ろ姿に向かってつぶやいた。
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ミス・ペティグルーの素敵な一日映画 "Miss Pettigrew Lives For A Day" の予告編はこちら 場所はロンドン、時は20世紀初頭。元祖・ハケンのミス・ペティグルー(貧乏+40才+キャリアなし+家族なし)が、ある日、職業斡旋所の手違いで売れっ子美人歌手の家に派遣されていきます。ところが面接もはじまらないうちから、美人歌手やその3人の恋人たちや女友達をめぐるトラブルにまきこまれ、なぜかなりゆきで解決。すっかり気に入られたミス・ペティグルーは、美人歌手の助けで見違えるように美しく変身し、生まれてはじめてパーティーに行ったり、男性との駆け引きを楽しんだり、これまで知らなかった世界をのぞきます。そしてついには素敵な恋まで見つけるという大人のためのシンデレラ・ストーリー。2008年米公開の映画原作。アカデミー賞女優フランシス・マクドーマント演じるミス・ペティグルーの変身ぶり、歌手役エイミー・アダムズの美女っぷりをぜひ劇場で観てみたいものですが、日本公開は今のところ未定の模様です。 負け犬訳者が贈る、大人の女性のための夢物語。負け犬さんも、そうでない人も、これを読んでハッピーをつかみましょう! |
![]() 北村京子 【藤岡ゼミ卒業作品】『本とタバコ』八月はサンフレア・アカデミーの、今年の三月に始まった「藤岡ゼミ」の最終月。モームの“Louise”や“Summing Up”を読んできたのだが、参加者の北村京子さんのモーム訳に驚いた。「オーウェルがあるよ、卒業記念にオーウェルを訳しておこう」と呼び掛けた。幸い版権がない。翻訳が出来上がった。北村さんにはすでに八年の翻訳歴があるが、文学ものは初めて。それがジョージ・オーウェルだから、ちょうといい、少しオーウェルにのめりこんで、いやサマーセット・モームでもいいのだけど、新鮮な文体を生み出してほしいな。オーウェルやモームを料理できれば、もう怖ものはない。 |





































