入門翻訳勝ち抜き道場

WEBマガジン 編集後記

編集後記

『岩坂彰の部屋』第15回「日本ネタは楽じゃない」で、岩坂さんが「人によっては躊躇するかもしれない、ロボトミーをしまくった医師の伝記」と紹介されていた『ロボトミスト』を少し前に読みました。

「3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜」、「悪魔の所業か、稀代の救世主か。医学史上空前の論争を巻き起こした、「精神外科」の実相とその時代」、「20世紀に悪名を馳せた医師といえば、ナチスのヨゼフ・メンゲレについで、ウォルター・フリーマンの名が挙がるに違いない」などなど、センセーショナルな宣伝文句に惹かれて手に取ったのですが、それだけではなく、ハリウッド女優フランシス・ファーマーのロボトミー手術について書いてあると知ったからです。

インターネットではこの部分について明らかにしている文章も出回っているのですが、ここではあえて触れず、読後、さっそく岩坂さんに、次の原稿の催促も兼ねてメールしました。「すごい本でした!読んでいる間、悪夢にうなされましたが、岩坂さんは翻訳中、大丈夫でしたか?『女優フランシス』のことが書いてあって、ウン十年来の不快感から解き放たれました」などと、なんともミーハーな読書感想文を寄せたのですが、岩坂さんからは、「日経の書評に、もっと図版や写真を入れてロボトミーの実際を視覚的につかめるようにしたほうがよかったと書かれていましたが、私は表紙のイラストでさえちょっとどうかと思っていたくらいで、あえて刺激的にはしなかったつもりなんですけども。個人的には、手術よりもキーンが滝で命を落とす場面のほうが訳していてつらかったです」という冷静かつ真摯なお言葉を頂戴いたしました。「フランシス」や「キーン」について、是非、本書をお読み下さい。脳科学ブームも手伝って、他にも興味深い話が満載です。フリーマン医師への印象も変わります。決して、マッドサイエンティストではありません!

今回、紹介くださっている『アーロン・T・ベック 認知療法の成立と展開』。「精神医学史として見たときに、これはちょうど『ロボトミスト』の対になる話で、並行して作業できたのは、私にとって実りの多い結果となりました」ということで、こちらも大変楽しみです!(Y.H.)

2009年11月30日号