ある日、一通のメールがやってきました。
「長い間ご指導いただき、本当にありがとうございました。
私事になりますが、実は、(株)アルクから今年度のアルク翻訳大賞実務翻訳部門の最優秀者に選ばれたとご連絡をいただきました。2010年の1月中旬に発売予定の『翻訳事典2011』に掲載される予定です。これもすべて、貴社の翻訳道場で鍛えていただいたおかげだと感謝しております。ありがとうございました。 高作 自子」
「斎藤静代の翻訳勝ち抜き道場」を6段まで進んでいた「ゆうぼう」さんこと高作さんからの『翻訳の海』退会フォームでした。退会されるので、本当は残念なはずなのですが、そんな気持ちを超えて、翻訳勝ち抜き道場挑戦者の大活躍が嬉しく、さっそくインタビューとなりました。是非、お読み下さい!(Y.H.)
―― 自己紹介をおねがいします
このたびはこうしたインタビューの機会を与えてくださって、ありがとうございます。 初めてお会いした方で私の名前をきちんと読めた人はいないので念のため申し上げますと、「たかさくよりこ」と読みます。現在は5歳の息子を育てる傍ら、日々翻訳の修行に励んでおります。
―― これまでの英語学習歴を教えてください
昔から英語が好きで、趣味的に洋書や英語の雑誌をよく読んでいました。大学・大学院では法律を専攻していたので、主に法律英語を中心に勉強していました。その後法律事務所勤務を経てアメリカのロースクールに留学したのですが、文字通り朝から晩まで英語と格闘していました。一番英語を勉強したのはおそらくその時だったと思います。
―― これまでの翻訳学習歴を教えてください
翻訳の勉強を始めたのは子供が生まれてからで、主に子供が寝ているときに出版翻訳の通信講座の課題に取り組みました。その後、いっとき出版翻訳から離れ、実務翻訳に転向しました。ある翻訳会社の通信講座で勉強したあと、運よく翻訳者として登録させていただくことになったのです。何度かお仕事をいただいたのですが、小さな子供のいる私の生活スタイルに合わなかったこと、本の翻訳がしたかったこともあって、ふたたび出版翻訳の道へと戻ることにしました。その後は斎藤先生の『翻訳勝ち抜き道場』をペースメーカーに、独学で勉強を続けて今に至っています。
―― 翻訳をしようと思ったきっかけを教えてください
留学中に「法律」よりも「言語」の面白さに目覚めてしまい、何か言葉にかかわる仕事がしたいと漠然と考えるようになりました。「通訳」「翻訳」「通訳ガイド」・・・などなどいろいろと調べましたが、言葉にじっくり向き合える翻訳という仕事に芸術的な魅力を感じ、一生の仕事として意識し始めました。
―― どんなジャンルの作品が好きですか?これまでに刺激を受けた、具体的な作品があれば作品名とその理由も教えてください
どのジャンルの本にも「面白い!」と思う本がありまして、特に好きなジャンルというのはないです。これまでで一番刺激を受けたのは、Harper Leeの『To Kill a Mockingbird』という本です。留学中に友人に勧められて読んだのですが、読み返すたびに新しい発見があり、不朽の名作だと思っています。
―― 翻訳勝ち抜き道場へ参加されたきっかけは何ですか?
出版翻訳の勉強を始めた年に、試しに応募したアルク翻訳大賞の出版翻訳部門で「佳作」をいただいきました。そして順風満帆に次々と・・・といけばいいのでしょうが、そんなに甘い世界ではないですね。その後は鳴かず飛ばずで、どうしたら仕事のきっかけがつかめるのだろうと試行錯誤の日々が続きました。実務翻訳の仕事を始めたのはその頃です。そして、やはり自分がやりたいのは出版翻訳だと思い直したころ、たまたまある雑誌で斎藤先生の翻訳勝ち抜き道場の記事を目にし、「優秀者にはアマゾンギフト券をプレゼント」という言葉につられて軽い気持ちで登録しました。
―― 翻訳勝ち抜き道場に参加してきて、苦労した点、悩んだ点はどういったことですか?
私はそれまで、どちらかというと硬派な本ばかり読んできたので、軽いタッチの本の翻訳には苦手意識を持っていました。翻訳勝ち抜き道場では様々なジャンルから出題されますが、特にこうした苦手な分野が取り上げられると、当然成績も悪く、どうしたらいい訳が作れるだろうかと悩みました
―― 苦労した点、悩んだ点はどのように解決されましたか?
毎回、斎藤先生が書いてくださったコメントを丁寧に読み、自分なりの反省点を書き出しました。優秀者に選ばれた方の訳と自分の訳を照らし合わせ、「なるほど、ここはこんな風に訳すのか」と勉強させていただきました。まだ苦手意識がなくなったわけでも、悩みが解決されたわけでもありませんが、反省しながら少しは前に進んでいるのではないかと思います。
―― 翻訳勝ち抜き道場に参加して、よかったと思うことを具体的に教えてください
一昨年の5月から昨年の11月まで1年半の長きにわたり、翻訳勝ち抜き道場にお世話になりました。こんなに長く続けてこられたのは、1回1回の勝負が楽しかったからです。やるからには勝ちたいと思って努力しますし、負けてもそこからいろんなことが学べますし、運が良ければギフト券までいただけるのです。また、先生のコメントも、いい部分はほめてくださり、この部分はまずいということもはっきり指摘してくださるので、とても励みになりました。2週に1度というペースも、1回に出される課題の分量もちょうどよく、小さい子供がいる私でも無理なく続けられました。たった5000円の会費で、半年ものあいだ2週に1回添削指導が受けられる、しかも順位がついて、他の方の訳も公表されて勉強になる、こんなお得でためになる講座は他にはないんじゃないでしょうか。
―― 道場挑戦中に、「上達した」と自分でも実感できた瞬間はあったでしょうか
苦手な分野の課題で優秀者に選ばれたときなどはその瞬間かもしれませんが、次の回では下から数えたほうが早いところまで転落といった感じでしたので、「上達した」わけではなかったのでしょうね。課題によって成績の良いときもあれば悪いときもあり、正直なところよく分らないのですが、毎回欠かさず続けている間にじわじわと力が付いてきたようには思います。
―― これからの翻訳者としての計画をおしえてください
留学中に懇意にしていた日系人の方が、強制収容所での自らの体験を本にしてアメリカで出版することになりました。アメリカと日本で同時出版を目指したいとのことで、日本語への翻訳は私が担当させていただくことになりました。私にとっては初めての訳書ですので、いい仕事ができるように全力を尽くしたいです。
―― 他の道場挑戦者、あるいは、翻訳者になるという共通の目標をもった他の読者へのメッセージをお願いします
翻訳勝ち抜き道場であれ、翻訳コンテストであれ、そのときどきの結果に一喜一憂される方も多いと思います。かくいう私もそうです。悪い結果が続くとがっかりし、自分には向いていないかもと思い始めるかもしれませんが、何よりも大切なのは「あきらめない」ことではないかと思っています。自分の経験からいって、どうも翻訳の力というのは、直線的に伸びていくものではなく、行きつ戻りつを繰り返しながら少しずつ伸びていくような気がしています。ですので、とにかく、あきらめずに気長に挑戦し続けていれば少しずつ上達していくのではないでしょうか。道場挑戦者の皆様、1回1回の勝負を楽しみながら、一緒に力をつけていきましょう!
(インタビューおしまい)
そして、今回、もう一つ嬉しかったのは、すでに翻訳出版の計画中であると伺えたことです。当マガジンとしても、出来うる限りの協力をしていけたらと思います。
高作さんもおっしゃっていますが、「あきらめない」って大切ですね。翻訳力は、「行きつ戻りつを繰り返しながら少しずつ伸びていく」。説得力のある言葉です。
高作さん、どうもありがとうございました!(Y.H.)
(第4巻143号)


『To Kill a Mockingbird』

























