The Oxford Book of Children’s Storiesシリーズより出題中
入門翻訳勝ち抜き道場

『原田勝の部屋』Macがあるなんて、ずいぶん古くからのもの書きでしょう。

原田勝
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《インタビュー》

版権エージェントに聞いておこう(後半)

語る人 三枝明子(みえだ・あきこ)さん、(株)日本ユニ・エージェンシー 児童書担当
聞く人 原田勝、翻訳者; 斎藤静代、翻訳者

インタビュー前半は、版権エージェントの仕事の内容、翻訳権の扱いを中心としたお話でした。後半は、翻訳者との望ましい関係や、三枝さんの翻訳出版にかける思いを中心にお伝えします。

●売れ行き好調の飛び出す絵本。これもユニで扱ってます。
●翻訳書の扉あたりをよく見ると、版権エージェントの名前がちゃんと書いてあります。

原田:先ほど、編集者に絵本の即興翻訳読み聞かせをすることがあるとおっしゃいましたが、たしかに編集者の方々が、皆さん原書がどんどん読めるわけでもなく、また読む時間もないことが多いですよね。また、海外の作家やジャンルの情報を系統的に追う暇もない。一方で、翻訳者は、特定の作家やジャンルをずっと追いかけている人が多いと思います。ですから、翻訳者が版権エージェントの方々とタッグを組んで、そういう情報こみで出版社に売りこみをかけるという形がもっとあっていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか?

三枝:そのとおりだと思います。ご検討いただける出版社の数は増えているわけではないのに、流れこんでくる原書の数や、翻訳出版される本の点数は確実に増えている。そこに翻訳者集団というか、翻訳者の方たちが活躍する余地があります。翻訳者さんの中には、ジャンルや作家に思い入れをもっていて、「三枝さん、今度この作家の新作が出るらしいんだけど」とか、「これ、すごいよ、これこれこういう話でさあ……」とか、言ってくれる人がいらっしゃいます。わたしはそういう話にもとづいて、それなら、あの出版社のあの編集者の方に見ていただこうか、と目星がつけられる。出版社が興味を示せば、その翻訳者さんにシノプシスを作ってもらって送る。出版が決まれば、できればその翻訳者さんに翻訳をやってもらう、という流れで進められます。

この方法だと、本の特徴をアピールすることができて、より多くの本を縁付かせることができると思います。出版社も助かると思いますよ。

原田:エージェントの方たちだって、毎週送られてくる原書の山で溺れかけていると思うので、翻訳者は原書ウォッチャーとしてお手伝いができるということですね。
「洋書の森」のように、まだ版権の売れていない本を集めて翻訳者に公開する方法もありますが、今言ったようなやり方の方が出版につながる可能性が高く、エージェント、出版社、翻訳者の三者がみんなハッピーになると思うのですが。

三枝:ジャンルにもよりますね。あまりにニッチなジャンルだと、出版に結びつけるのは簡単ではありません。翻訳者の方が熱意をもってもちこんでこられても、すぐに出版に結びつくわけではありません。何年かお時間をいただくこともあるということです。

ですから、現実的にはこんな手順になると思うのです。たとえば、どなたかの紹介でわたしたちが翻訳者の方と会い、その方の実績や得意分野や好き嫌いなどを伺って、マッチしそうなものがあれば原書を紹介し、読んでいただいてシノプシスを作ってもらいます。それをもとにわれわれが出版社に売りこむとか、その翻訳者の方に独自に動いてもらう、というやり方ですね。翻訳者の方が、われわれとはおつき合いの浅かった出版社さんを引っぱってきてくれるケースもありますし。

原田:そこで問題になるのは、実績のない、あるいは実績の少ない翻訳者はどう動けばいいか、ということです。

三枝:そうですね。やはり実績のある方だとわたしたちはありがたいですね。

一方で、日本ユニ・エージェンシーは「洋書の森」に原書を預けたり、あるいはバベル、アメリア、といった翻訳教育部門と出版部門の双方をもった会社に、公募などの形で原書を提供したりもしていますので、そういうルートを活用していただければと思います。

原田:エージェントも出版社も翻訳学校も、それぞれ営利企業であり、慈善団体ではないのですから、翻訳者もそれを理解した上で、きちんと情報を集め、本を読み、腕を磨いて動け、ということでしょうか。そうすれば必ず人に訴えかける力が身につき、話を聞いてくれるところも増えていきますからね。

三枝:人それぞれ得手不得手がありますし、好きなジャンル、得意なジャンルをもっている方とは話がしやすいですね。

原田:斎藤さんは、今日、三枝さんと初めて会ったわけですが、どうですか、得意ジャンルを売りこむとしたら?

斎藤:好きな本は「女性もの」です。女性が生まれてから死ぬまで、どんな一生を送ったか、そういうことが描かれている本が好きです。

三枝:読んでいて身につまされませんか?

斎藤:痛みを感じるのがいいんです。胸がどきどきして……。ああ、でも、あまり熱くなってはいけないのかもしれません。もっと冷静に作品を評価できないと。

原田:いや、そうでもないでしょう。熱くなればいいんですよ。冷ましてくれる人はまわりにいっぱいいるから。編集の人たちは、その辺は鼻が利く人が多いですよ。

三枝:それに、翻訳者も一人の人として自己主張してほしいですね。たとえば、この本はここが好きだ、ここがこうだから面白い、ここに熱くなるんです、という話を聞きたい。その人がどんな人なのか、こちらに伝えてほしいと思います。それがあれば、新着の本が来た時、この本ならあの人に読んでもらおう、と顔が浮かびますから。

斎藤:でも、どんな人でもここへ来て、原書を見せてもらったり、翻訳権の情報をいただけるわけではありませんよね。

三枝:わたしたち版権エージェントが、どういう仕事をしていて、翻訳者の方とどういう形で協力できればいいと考えているかは今日の話でわかっていただけたと思います。あとは、こちらがお話を伺いたくなるような立場を作ってほしい。その立場を作るのは翻訳者ご本人しかいない。そうなるまで頑張ってほしいと思いますね。

今日はなんとなく、「版権エージェント」「出版社」「翻訳者」という代名詞で話していますが、じつはすべて人間対人間なんです。メールでも、電話でも、会って話をしていても、相手の人間性を感じながらやりとりをしているわけです。表向きの話は、立場とか、権利とか、そういう枠の中で進むのかもしれませんが、結局は一人の人として、あとで恥ずかしくない応対をお互いにしたい、そう思います。

原田:おっしゃるとおりです。本にまつわる仕事というのは人間関係でなりたっていますから。

三枝:仕事ですから、大変なこともありますが、最終的にわたしが紹介した本が出版され、それを読んだ子どもさんから届いた感想を見せてもらったり、あるいは、書店の店先で一心不乱に絵本を座り読みしている子を見かけると、ああ、大変だったけど、あの本やってよかったなあ、と思います。児童書は子どもの頃から好きだったし、たまたまユニに入って配属されたのが児童書で、ほんとにラッキーです。

作者の思いや原書のたたずまいを、わたしたちの仲介で、翻訳書というもう一つの形で世に送りだせる。そう思うと、とっても楽しい仕事なんです。

原田:今日は長時間、貴重なお話をありがとうございました。本を見る角度がまた一つ増えた気がします。これからも、たくさんの本を日本に紹介してください。ありがとうございました。

(この対談は、2008年1月23日、神田神保町にある(株)日本ユニ・エージェンシーで行ないました。)