出題に当たって翻訳をしたい――みなさんは、なぜ、そんなふうに思われるのでしょう?「英語が好き、文学が好き」「ことばで何かを創りたい」人それぞれ、理由はさまざまだと思います。翻訳を仕事にするということは、ひとつには、誤訳はもちろん、その文章の味付けのようなもの、いっさいに責任を持つことです。こんなに大変なこと、趣味でこつこつ翻訳している方がずっと楽しいかもしれません。でも、やっぱり、本にしたいんですよね。
翻訳は、音楽の演奏や料理に似ていると思います。同じ楽曲でも、リヒテルとアシュケナージでは別の曲のよう。同じ食材でも、レストランのシェフの味は出せなかったりもする。どうしたら自分の納得できるものができるのか試行錯誤しては、落ちこんだり、嬉しくなったりするところ、基礎を固めてこそ、自分のオリジナルが活きるというところも似ています。そして、よい演奏、美味しい味がたくさんあるように、よい訳もひとつだけではありません。
よい訳を創るためには何をすればよいのでしょう。それには自分の訳を、多くの人の目に触れさせることだと思います。それによって、自分の訳を客観的に見られるようになります。私の評価は、そのためのひとつの意見にすぎません。可能なら、この道場をきっかけとして、お友達と意見を交換し合ってみてください。何度も何度も、この言葉でいいのかな、と吟味してください。
この入門道場では、読解力に重点を置きます。ただ、英文解釈の間違いは他人が指摘できますが、日本語による表現、つまり味付けのようなものには、たったひとつの正解はないと思います。ちょっとしたミスタッチや、塩加減の失敗は気になさらずに、まずは演奏を楽しむように、料理を楽しむように、翻訳にチャレンジしてみてくださいね。(藤田優里子)
The Oxford Book of Children’s Storiesシリーズの最後は、The Story of Celia and Chloe(1749)です。英国の作家 Sarah Fielding(1710-1768)は大人向けの小説でも成功を収めていました。The Governess, or The Little Female Academy(1749)という童話を書き、それは英国で初めての子供向け小説となりました。
アメリカ独立のはるか前、オーストリア継承戦争があり、ヘンデルがメサイアを作曲した、そんな時代に生きたSarah Fieldingによる作品です。一人の男性をめぐっての、仲の良い従姉妹どうしの葛藤が描かれます。