「わたしの新訳<競訳プロジェクト>」、それは、ある共通の作品を二人の翻訳者がそれぞれ訳し、それぞれが翻訳中に疑問に思ったことをコメントとして公開し、それぞれの翻訳を同時に公開する、というプロジェクトです。二人の翻訳者 はハンドルネームでもペンネームでもなく、翻訳者としての実名で登場します。
 その二人の翻訳者は、村松静枝さんと上松さちさん。
さらに、読者の翻訳作品も受け付けます。村松さんと上松さんと一緒に翻訳していきませんか?ご安心下さい、読者のみなさまはハンドルネームまたはペンネームで構いません。
 取り組む作品は、英国の国民的作家チャールズ・ディケンズの“Poor Relation’s Story”。元々、藤岡啓介先生の鎌倉のご自宅で開催する翻訳自主勉強会「チャコの会」で取り上げた題材です。藤岡先生のお弟子さんたちが、誰に強制されるでもなく集まり、同じ作品に没頭し、とことん翻訳に取り組む。こんな翻訳勉強会をウェブでも繰り広げることができたら、そんな思いが発端となって、この企画がスタートしました。

〜 翻訳自主勉強会「チャコの会」について 〜

村松静枝 

ご縁があって藤岡啓介先生の書斎に集まり翻訳を学び、互いに研鑽しあってきた仲間たちの呼びかけで、2009年5月に翻訳自主勉強会「チャコの会」が始まりました。主に短編小説に課題をしぼり、1ヶ月から2ヶ月に一度の割合で藤岡邸の書斎に集まっては各自の訳文を比較検討し、疑問点をぶつけあっています。途中に持ち寄った美味しいお菓子とお茶の時間をはさみつつ、そしてときには少々脱線しながらも、日が暮れるまで翻訳の世界に没頭しています。
 ちなみに「チャコ」とは、藤岡先生の愛する茶トラ美人猫の名前です。自分で器用に書斎のドアを開けて入ってくるや、みんなが熱く討論しているテーブルに飛び乗り、場の空気を読まずに大あくびをしたり耳をかいたりご主人様の大切な蔵書の上に寝そべったりと、なんとも自由気ままなスタンスで参加してくれる「会長」です。

課題書の紹介とあらすじ― “The Poor Relation’s Story” Charles Dickens

英国の国民的作家チャールズ・ディケンズは1852年、自身が編集長を務めていた週刊文芸誌『Household Words』のクリスマス特別号のために、著名な作家たちに短編の寄稿を依頼しました。彼の依頼に応じてエリザベス・ギャスケルなどが作品を提供し、ディケンズ自身を含む9名の作家による「クリスマスの暖炉を囲んで家族が語りあうお話」10編が、その年の『Household Words』クリスマス号を飾ったのです。
 “The Poor Relation’s Story”はディケンズが著した2編のうちの1編で、文字通り、クリスマスを迎えた炉辺に裕福な一族が輪になって集い、順番にちょっとした物語を披露していくという場面から始まります。なかば無理やり最初の語り手にされてしまったのは、立派な一族のなかでなぜか1人だけ事業にも結婚にも失敗し、一族の長のわずかな施しを受けながら他人の家で下宿暮らしをしているうだつのあがらない貧しい初老の男マイケル。「私の話はここにお集まりになった一族の皆さまを驚かしてしまうにちがいありません。・・・わたしは皆さんが思っていらっしゃるような人間ではありません。ほんとうはまったく別の人間なのです。・・・」と語り始めた彼の真実の姿とはいったい・・・。

出題テキスト全文は、こちら

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